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乳腺外科

当科の特徴および診療内容

乳がんの治療法について

乳がん治療は手術前後に、がんの性格(サブタイプ)に合った薬物療法(化学=抗がん剤、内分泌=ホルモン剤、分子標的剤)を選択し、さらに放射線療法が望まれる場合には追加することが基本と考えられています。
サブタイプとはエストロゲンレセプター(以下、ERと表記)の陽・陰性、HER2の陽、陰性の組み合わせで分けられます。ER陽性でHER2陰性をルミナルタイプと呼びますが、がんの増える速度はゆっくりしていることが多く転移を起こすことは少ないのですが、その中でがん細胞の核が大きいものや核分裂像が多いものは成長が速く転移する頻度も高いと考えられ、悪性度が高いと評価しています。そして悪性度が高いがん細胞ほど抗がん剤の効果が望めると言われています。当院では核異型度(G)の程度とKi67(増殖速度)から悪性度の評価を行っています。

サブタイプ ER HER2 悪性度 薬物療法
トリプルネガティブ 陰性 陰性 - 化学
HER2過剰発現 陰性 陽性 - 分子標的+化学
ルミナル・HER2 陽性 陽性 - 分子標的+化学、内分泌
ルミナルB 陽性 陰性 G3もしくはKi67が30%以上 化学、内分泌
ルミナルA 陽性 陰性 上記以外 内分泌、進行例で化学

手術

手術法は乳房切除術と乳房温存術に分けられます。乳房温存術は乳房の大きさにも左右されますが、しこりの大きさが3cm以下で乳頭から2cm以上離れているのが理想的です。また、手術前に化学療法を行って縮小させてから行うこともあります。乳房切除術では乳頭乳輪を残す(温存する)方法もあります。

乳房再建

乳房再建は形成外科に依頼しています。乳房切除と同時に行う一次再建は、当院ではお腹の脂肪と筋肉(腹直筋皮弁)を用いる自家組織による再建が多く、術後6日間の床上安静が必要になり入院期間は通常の乳房切除と比較して長くなりますが、手術は1回で済みます。5年前から保険適応になった人工物(インプラント)による再建は、乳房切除の際に筋肉(大胸筋)の下に拡張器を挿入して徐々に膨らませ、半年後にもう一度手術を行いインプラントを挿入します。再建法は、本人と形成外科医との話し合いの上で決定しています。また、乳房切除後数年してから行う二次再建も可能です。

腋窩リンパ節

腋(腋窩)は、リンパ節転移がある場合を除いて、蛍光法(赤外観察カメラでリンパの流れを観察してリンパ節を探る方法)によるセンチネルリンパ節生検を行います。術中の検査で転移が認められた場合にはリンパ節郭清に変更しますが、転移がセンチネルリンパ節だけにとどまっている可能性が高い場合(微小転移)には、近傍のリンパ節を数コ取るだけにとどめて郭清を行いません。郭清を行わなければ術後の入院期間は短縮し、後遺症として頻度の高い手術側の腕〜手のリンパ浮腫が避けられます。平成27〜29年の3年間に468人に行い、387人(83%)は郭清を行わずセンチネルリンパ節生検だけで済みました。

放射線療法

乳房温存術後には手術した乳房に、25〜30日(5〜6週)間の照射を行います。放射線科医の定期的な診察の下で安全に実施され、入院は不要です。乳房切除術の場合でもリンパ節転移が4コ以上あった場合には、切除した部位(胸壁)への照射が推奨されています。さらに手術法に関係なく、リンパ節転移が4コ以上あった場合には鎖骨上(頸)への照射も併せて行うことが推奨されています。副作用として放射線皮膚炎があり、時に色素沈着、発汗減少と周囲の発汗増加、皮膚乾燥による痒みが残ります。放射線肺炎は約3%に発生し、治療終了後数ヵ月〜1年に持続する咳で発見され、呼吸器内科に治療を依頼しています。

薬物療法

化学療法、分子標的療法、注射剤を用いた内分泌療法は化学療法センターで行います。がん専門薬剤師、がん化学療法看護認定看護師、さらに乳がん看護認定看護師が中心になって、より安全に薬物療法が実施できるよう努めています。ただし通院治療が困難な場合や、副作用が強い場合には入院して行うこともあります。

治療を受ける際のポイント

治療法に関してはできるだけ希望に添うよう努めています。乳がんと告知されたら、納得のいく説明や治療を受けてください。セカンドオピニオンは遠慮なく申し出てください。また、不安や悩みは尽きないものです。相談支援センターを利用し精神的な苦痛を和らげることも可能です。そこでは就労に関するサポートも行っています。独りで悩まずに、周囲の助けも借りながら、前向きに治療に臨むことが大切です。

病診連携パスの推進

当院とかかりつけ医との間で、あらかじめ数年先までの診療方法を定めた計画書に沿って治療を行う病診連携パスを積極的に推進しています。主に内分泌療法を行う場合で、普段はかかりつけ医に通院し、1年に1回は当院を受診していただきます。平成23年から始めて、平成29年までに130人に導入しました。

乳がんの治療成績について

最近10年間の新たに治療を開始した年別患者数をグラフに示します。高齢あるいは遠隔転移のために手術を行わなかった場合は「薬物療法のみ」にふくまれます。

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手術法で見ると、平成26年までは乳房温存術の方が乳房切除術より多かったのですが、最近は乳房切除術を希望される人が増えています。なお、両側乳房を同時に手術した人もいるので、上のグラフよりも総数は多くなります。

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一次乳房再建を行う人も年々増加しています。その中でも乳頭乳輪を温存した乳房切除と一次再建を行う数が増えています。

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標準的な化学療法を始めた平成13年から、術後5年以上経過した平成24年までの12年間に手術を行った1042人(転居などで消息不明は4人で、追跡率99.6%)の5年実生存率と無再発生存率を示します。また、平成13年から10年以上経過した平成19年までの7年間に手術を行った469人(転居などで消息不明は9人で、追跡率は98.1%)の10年実生存率と無再発生存率も示します。0期がTA期より不良なのは全体数が少なく、他病死や乳房温存術後の多発病変(新たにがんが発生)が生じたためです。

pUICC病期 人数 5年実生存率 5年無再発生存率
0 期 71人 95.8% 90.1%
I A 期 376人 96.3% 94.9%
I B 期 7人 85.7% 85.7%
II A 期 264人 94.7% 88.3%
II B 期 139人 92.1% 85.6%
III A 期 107人 86.9% 73.8%
III B 期 7人 71.4% 71.4%
III C 期 58人 63.8% 39.7%
IV 期 13人 53.8% -
pUICC病期 人数 10年実生存率 10年無再発生存率
0 期 24人 87.5% 79.2%
I A 期 128人 89.8% 85.9%
I B 期 1人 100% 0%
II A 期 126人 88.9% 84.9%
II B 期 84人 88.1% 76.2%
III A 期 63人 76.2% 57.1%
III B 期 3人 66.7% 66.7%
III C 期 35人 40% 28.6%
IV 期 5人 20% -

術後2年以上経過した平成27年までに行われた乳房温存術898人中、残した乳房内の再発もしくは新たな乳がん発生(多発がん)は26人(2.9%)いました。そのうち7人が亡くなりましたが、乳房内再発が進行して死に至った人は2人だけです。乳房温存術を受けた場合に残った乳房に再発する可能性は数%ありますが、それが原因で生命が脅かされることはまれと考えます。
平成27〜29年の術後の入院日数を示します。一時乳房再建以外はほとんどの人が1週間以内で退院し、センチネルリンパ節生検だけで済んだ乳房温存術では術後3〜4日で退院できます。

手術法腋窩リンパ節人数平均入院期間
乳房温存手術 センチネルリンパ節生検 190人 3.2日 2〜5日
リンパ節郭清 46人 6.0日 4〜8日
乳房切除術 センチネルリンパ節生検 133人 5.9日 3〜8日
リンパ節郭清 69人 7.3日 5〜16日
一次乳房再建手術 71人 14.3日 12〜20日

術後の合併症として、平成27〜29年の3年間に行った手術560人(乳房)中、一次再建を行った72人を除く488人で見ると、出血による再手術や血腫除去が5人(1.0%)、感染などの創部に関する合併症が16人(3.3%)、退院後に漿液腫(創部に液が貯留して瘤状になる状態)で穿刺をしたのが74人(15.2%)ありましたが、生命を脅かす重篤な合併症はありませんでした。一次再建では退院後に創傷処置が必要なことはありますが、重篤な合併症はありませんでした。

早期発見が重要

下のグラフのように、検診や人間ドックのマンモグラフィあるいは超音波検査で発見される人が年々増えています。このような画像検査で発見される場合には早期がん(0、T期)の比率が高く、早期がんは先に記したように再発率が低く治癒することが期待できます。平成25〜29年の5年間に自覚症状がなく検診もしくはドックでの画像検査で発見されたのは189人、しこりなどに気付いて受診し発見されたのは476人いました。このうち、早期がんはそれぞれ151人(80%)、207人(44%)でした。
偽陽性(異常あり精密検査あるいは手術を行い最終診断は良性になった場合)、偽陰性(がんが存在したのに異常として指摘されない場合)、過剰診断(がんではあるものの急いで治療をする必要がない場合、高齢者では治療そのものが不要である場合)など不利益、問題点はありますが、その一方で自覚症状がなく早期で発見されると治癒を期待できる確率が上がり、また高価な抗がん剤や分子標的剤まで使用せずに済む可能性が高くなることも事実です。
がんにかからないこと、つまり見つからないことこそが最良ですが、検診やドックを利用することでより早期にがんを発見し、治療内容を軽くすると同時に、そして何よりも治癒を目指しましょう。

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甲状腺外科

甲状腺、副甲状腺の手術は、平成29年4月より頭頸部外科が担当しています。

平成30年2月28日改訂
文責:乳腺外科部長 西村 秀紀

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診療スタッフ

西村、小沢医師が主に担当しています。

西村 秀紀(にしむら ひでき)

昭和60年卒

役 職 副院長
乳腺外科部長
呼吸器外科部長
緩和ケア内科部長
心臓血管外科部長
臨床腫瘍科部長
がんセンター長・がん相談支援センター長・緩和ケアセンター長
心臓血管センター長
資 格 日本外科学会指導医・専門医・認定医
日本乳癌学会乳腺指導医・専門医
日本臨床腫瘍学会暫定指導医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
検診マンモグラフィ読影認定医
乳房超音波検診講習会試験A判定
信州大学医学部臨床教授
専門分野 乳腺、呼吸器

小沢 恵介 (おざわ けいすけ)

平成6年卒

役 職 乳腺外科副部長
呼吸器外科科長
資 格 日本外科学会専門医
日本乳癌学会乳腺指導医・専門医
日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 乳房再建用エキスパンダー/インプラント基準医師・責任医師
検診マンモグラフィ読影認定医
専門分野 乳腺

砥石 政幸 (といし まさゆき)

平成9年卒

役 職 乳腺外科科長
呼吸器外科副部長
資 格 日本外科学会指導医・専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
専門分野 呼吸器

境澤 隆夫 (さかいざわ たかお)

平成15年卒

役 職 乳腺外科科長
呼吸器外科科長
資 格 日本外科学会専門医
専門分野 呼吸器

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外来診療日

平成30年4月1日更新

○:初・再診  ●:再診

医師名 備考
西村 秀紀      
小沢 恵介     交替制  
砥石 政幸     交替制  
境澤 隆夫     交替制  

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治療実績

主な対象疾患

乳がんを中心に乳腺疾患の治療、甲状腺疾患 ほか