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ロボット手術はなぜすごい 連載 第7回

コラム ロボット手術はなぜすごい

2024/12/09

第7回 ものまねニューロン

ノラリ・クラリ(ロボット外科医)

モノマネ上手な芸人がテレビではうけている。何人ものタレントや有名人の癖や特徴をうまく捉え、デフォルメ(強調)するので愉快である。

もともとはサルの実験から発見されたらしいが、人間の脳にもミラーニューロン(鏡の神経)というものがあるらしい。この神経は、他人の特定の身体動作を目撃すると、この「見る」という感覚だけで、あたかも自分が同様の動作をしているように(身体は動かさないで)、活動するという。すなわち他者の動作を自分の大脳でなぞる、あるいはシミュレートするらしい。この神経の機能あるいは役割については多くの説があるが、他人の行動を理解したり、模倣によって新たな技能を獲得したりするのに重要ではないかといわれている。他人の動作を見るということで、今度は自分で同じ動作をする下準備をしているのかもしれない。

どんな運動や技能の獲得も、模倣やモノマネから入る。特に技能や技術を極める職業においては、まず上質の技を繰り返し見るということが、上達の近道のように思える。実際、身体を動かさなくても、あなたの「ものまねニューロン」は達人の技をシミュレートしていることになる。モノマネ上手な芸人はミラーニューロンの機能がもともと優れている? あるいは鍛えている? テレビで大相撲を観戦していて、贔屓の力士の取り口に合わせて、思わず身体に力が入ってしまうのも、私のミラーニューロンが働いているせい……?

ダ・ヴィンチ(da Vinci Surgical System)の手術は、ラーニングカーブ(学習曲線)が急峻であるといわれている。つまり、ある術式を習得するのに少ない経験数で、一定レベルの水準に達するということである。これはダヴィンチの3Dの拡大視野や、操作性が優れているということも1つの要因ではあろうが、最も大きな要因は、他人の手術がモニターで観察でき、YouTubeなどでも視聴できるからだ。ミラーニューロンで容易にモノマネができるのである。

複雑な気持ちであるが、最初に始めた術者(先発者)より、それをズーッと観察していた(若い後発者)のほうが、あっという間にうまくなる。骨盤底の筋膜を温存する尿が漏れない前立腺がんの手術方法も、毎回毎回試行錯誤しながら(成績が安定するまでに数十回以上は要したと思う)、ようやく自分のモノにしたすばらしい方法であると自負していたが、その原理や手順も若手は数回見ただけで次々にマスターしていくのである。

たしかにダ・ヴィンチの手術はゲーム的なところがあるので、ゲーム世代の若手のほうが上達が早いのかもしれない。それともミラーニューロンは若いほうが優れているのか? ちょっぴり悔しい気持ちもあるが、手術手技には特許がないので、患者さんのためであれば、とびっきり気前よく技術は盗まれようと思う。世阿弥の『風姿花伝』(通称:花伝書)では「秘すれば花」というらしいが、ダヴィンチ手術の時代においては、良い技術や失敗の伝達は速やかなほうがよい。

相撲を観ていると思わず力が入ってしまうのはミラーニューロンのせい?

(本連載は医学書院のWebサイト『Medical Mashup』より許諾を得て転載しています)

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