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ロボット手術はなぜすごい 連載 第36回

2025/06/30

第35回 遅いことのメリット・デメリット

ノラリ・クラリ(ロボット外科医)

昼間ある程度努力すれば、寝ている間にあなたの脳が不可能を可能にしてくれるかもしれない。

睡眠は運動記憶を整える

みなさんは自転車に補助輪なしで乗れるようになった時のことを覚えているだろうか。性格や、やる気による違いもあるだろうが、何度か転びながらも、いつのまにか乗れるようになったのではないだろうか?

私は子どもの頃は運動が得意で足が速く、球技もたいてい上手だった。ただ小太りだったせいか、小学校の体育の授業で鉄棒の足かけ上がりができなかった。それが悔しくて、放課後、校庭に残って一人で練習をした。あたりが暗くなって、膝の裏も赤く、皮が剥げて、痛くなるまで続けたがとうとうできなかった。その日は悔しくて泣きながら寝たような気もするが、翌日、だめもとで足をかけて回ったら、なんと1回で簡単にできたのだった。前日はあんなに練習してもできなかったのに、一体何だったんだろうと不思議に思った。

もう一つはクロールの息継ぎだ。小学4年生のとき、市の水泳大会の選手候補に選ばれた。当時、体育の教師が夏休みの大会に向けて、放課後まで厳しい指導をしていた。クロール自体は速く泳げたが、息継ぎの際は顔を横に向けて、口半分が水面から出るようにして息を吸わなければならない。しかし私は水を飲むのが怖くて、顔全体が水面上に出るように息継ぎしていて、その時にスピードが落ちてしまう。その教師から散々厳しい指導を受けたがなかなかうまくできず、「こんな簡単なこともできないんなら、トットとヤメろ!」と怒鳴られたので、「じゃ~ヤメます」とヤメてしまった。うしろめたさはあったが、盆踊りの練習をしているほうが楽しかった。おそらく水泳大会も終わり、夏の終わりにプールで遊びで泳いでいると、どこから見ていたのか、かの教師が「おまえ、ちゃんと息継ぎできるじゃないか」と言った。なんと自分でも気がつかないうちに普通に息継ぎができるようになっていたのだ。これも不思議なことに、できるようになったことに無意識だった。

寝る子にはレミニセンス効果

これらのように、いくら練習してもできなかったのに、一晩寝たり、休養期間を置いたりするとできるようになることを、レミニセンス効果と呼ぶ。睡眠中や無意識の間に技能の記憶が自然に整理されるということらしい。おそらくニューラルネットワークのうち、重要な経路が強化されたり、無駄な経路が刈り取られたりすることが、睡眠中や休養中に自動的に起こっていると思われる。

ダ・ヴィンチ(da Vinci Surgical System)で前立腺の全摘除は最も多く行われている手術の一つであるが、骨盤の奥深くの狭いスペースに存在する前立腺を扱うので、ロボット支援手術のメリットが最も活かせる手術であるとも言える。ただ、最初のうちは骨盤の狭い患者さんや恥骨が飛び出た患者さんの場合、両手の手術器具が恥骨をこすって出血したり、動作制限が厳しくて膀胱と尿道の吻合は困難だった。特に途中で糸が切れると全てやり直しになってしまい、疲労困憊した。さらに大きな前立腺肥大症が伴う場合は、肥大した前立腺が骨盤底にはまり込んで、難易度に拍車をかけた。

狭骨盤での運針

多くの術者は、狭骨盤での膀胱尿道吻合に最初のうちはとても苦労するが、経験を積むにつれ自然に上手くなる。おそらくレミニセンス効果なので、言語化できない。先日、若手が苦労していたのを途中で交代したら、自分が一度膀胱にかけた糸を左手で頭側および膀胱を押さえるように背側に引っ張り、右手で次にかけるべき尿道の位置をコントロールしていることに気がついた。

このような患者さんで何度か苦労すると、手術前に難易度を予測するノモグラムでも作成して、リスクに備えて手術を行うのがよいかと真剣に考えた。しかし私を含め、いつの間にか難易度の高さに文句を言う者はいなくなった。おそらく、みんな上手くなったのだ。たとえ狭骨盤であっても、無意識に対応できるようになったのだ。これもレミニセンス効果の一種であろう。

大谷翔平選手は十分な睡眠時間を確保するようにしていることはよく知られている。彼がレミニセンス効果について知っているかどうかは不明ではあるが、その効果を見事に体現していることは明らかである。われわれ凡人も、上手くいかないときは、悩んでいないで布団を被って寝てしまうのが、上手くいくコツかもしれない?

(本連載は医学書院のWebサイト『Medical Mashup』より許諾を得て転載しています)

コラム ロボット手術はなぜすごい

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