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乳腺外科

乳腺外科

患者さん自身が納得できる治療を選択できるよう、個々に合わせた乳がん治療を提供

ご挨拶

乳房疾患、中でも女性がかかるがんで最も数の多い乳がんの診断、治療を主に扱う診療科です。
乳がん治療は手術前後に、がんの性格(サブタイプ)に合った薬物療法(抗がん剤・ホルモン剤・分子標的剤)を選択し、さらに放射線療法が望まれる場合には追加することを基本としています。治療法に関してはできるだけ患者さんの希望にそうよう努め、患者さん自身が納得のいく治療を選択できるよう、相談や支援の体制も整えています。

乳腺外科部長 西村 秀紀

診療内容

乳房疾患、中でも女性のがん罹患数が最も多い乳がんの診断、治療を主体に行っています。 周囲の医療機関からご紹介いただき精査と治療を進めます。
また、2024年度より数は少ないものの人間ドック以外でも乳房検診を行うことになりました。

主にこのような方を診ています

  • 乳がん
  • 乳腺腫瘤
  • 特殊な乳腺炎

はじめに

国立がん研究センターの発表では年間10万人ほどの乳がんの登録があり、女性の9人に1人が一生涯に乳がんにかかると計算され、よくある病気の一つとも言えますが、告知されたときの衝撃はいかばかりでしょう。

ただ、早期がんは9割以上が治ります。治療は精神的にも経済的にも負担がかかり、さらに10年に及ぶこともありますが、自分のためにそして家族のためにも治癒をめざしましょう。

乳がんの治療法について

乳がん治療は手術前後に、がんの性格(サブタイプ)に合った薬物療法(化学療法=抗がん剤、内分泌療法=ホルモン剤、分子標的療法=分子標的剤)を選択し、さらに時に放射線療法を追加することが基本です。
サブタイプとはエストロゲンレセプター(以下、ERと表記)とHER2の有無(陽性、陰性)の組み合わせで表のように分けられます。ER陽性でHER2陰性をルミナルタイプと呼び、内分泌療法が選択されますが、リンパ節転移があったり核グレード(G)や増殖する速さ(Ki67)から悪性度が高い場合には抗がん剤も追加します。また、術後にCDK4/6阻害剤(分子標的剤)を併用することもあります。
ER陰性では術前の化学療法が推奨され、特にHER2陽性のHER2過剰発現では分子標的+化学療法によって半数以上にがん細胞(浸潤がん)の消失が確認され、消失すると治癒が期待できます。トリプルネガティブでは免疫チェックポイント阻害剤が保険診療で使えるようになり1年が経過し、2/3でがん細胞が消失しました。

表 乳がんのサブタイプの分類と選択される薬物療法

サブタイプ ER HER2 薬物療法
トリプルネガティブ 陰性 陰性 化学療法、免疫療法+化学療法
HER2過剰発現 陰性 陽性 分子標的療法+化学療法
ルミナル・HER2 陽性 陽性 分子標的療法+化学療法、内分泌療法
ルミナル 陽性 陰性 内分泌療法、化学療法、分子標的療法+内分泌療法
手術

手術法は乳房全切除術と乳房部分切除術(乳房温存術)があります。乳房部分切除術はしこりの大きさが3cm以下で乳頭から1.0cm以上離れている場合を対象とします。
また、手術前に化学療法を行って縮小させてから行うこともあります。乳房全切除術では乳頭を残す(温存する)方法もあります。

乳房再建

乳房再建は形成外科に依頼しています。

乳房切除と同時に行う一次再建は、当院ではお腹の脂肪と筋肉(腹直筋皮弁)を用いる自家組織による再建が多く、術後6日間の床上安静が必要になり入院期間は通常の乳房切除と比較して長くなりますが、手術は1回で済みます。

人工物(インプラント)による再建は、乳房切除の際に筋肉(大胸筋)の下に拡張器を挿入して徐々に膨らませ、半年後に改めてインプラントを挿入するのですが、インプラントによる悪性リンパ腫の発症の報告があり、インプラント使用は慎重になっています。

また、乳房切除後数年してから行う二次再建も可能です。

腋窩リンパ節

腋(腋窩)は、リンパ節転移がある場合を除いて、蛍光法(赤外観察カメラでリンパの流れを観察してリンパ節を探る方法)によるセンチネルリンパ節生検を行います。術中の検査で転移がない、あるいは微小転移の場合には郭清を行いません。郭清しなければ術後の入院期間は短縮し、後遺症である手術側の腕のリンパ浮腫を避けられます。

2019~2023年の5年間に680人に行い、606人(89%)はセンチネルリンパ節生検だけで済みました。

放射線療法

乳房温存術後には手術した乳房に、25~30日(5~6週)間の放射線照射を行います。放射線科医の定期的な診察の下で安全に実施され、入院は不要です。乳房切除術の場合でもリンパ節転移が4コ以上あった場合には、切除した部位(胸壁)への照射が推奨されています。さらに手術法に関係なく、リンパ節転移が4コ以上あった場合には鎖骨上(頸)への照射も併せて行うことが推奨されています。副作用として放射線皮膚炎があり、時に色素沈着、発汗減少と周囲の発汗増加、皮膚乾燥による痒みが残ります。

薬物療法

化学療法と分子標的療法の大部分は点滴が主体で、化学療法センター(2024年度から薬物療法センターと改称)で行います。がん専門薬剤師、がん化学療法看護認定看護師、さらに乳がん看護認定看護師が中心になって、より安全に薬物療法が実施できるよう努めています。

ただし、通院治療が困難な場合や、副作用が強い場合には入院して行うこともあります。

治療を受ける際のポイント

治療法に関してはできるだけ希望に添うよう努めています。乳がんと告知されたら、納得のいく説明や治療を受けてください。

セカンドオピニオンは遠慮なく申し出てください。

また、不安や悩みは尽きないものです。相談支援センターを利用し精神的な苦痛を和らげることも可能です。そこでは就労に関するサポートも行っています。独りで悩まずに、周囲の助けも借りながら、前向きに治療に臨むことが大切です。

病診連携パスの推進

当院とかかりつけ医との間で、あらかじめ数年先までの診療方法を定めた計画書に沿って治療を行う病診連携パスを推進しています。普段はかかりつけ医に通院し、1年に1回当院を受診します。

乳がんの治療成績について

2000年以降の新たに治療を開始した年別患者数をグラフに示します。
高齢あるいは遠隔転移のために手術を行わなかった場合は「薬物療法のみ」に含まれます。2019、2020年の減少は当院の担当医が1人になったことと新型コロナウィルス感染症による受診控えが影響したものと考えています。

グラフ① 2000年以降の新たに治療を開始した年別患者数

手術法は2005年から2014年までは乳房温存術が半数以上で、その後は乳房全切除術が半数を超えています。インプラントを用いた乳房再建術の普及、術後の放射線療法を回避する人の増加が要因と考えます。

グラフ② 2000年以降の手術方法の内訳

術後3年以上経過した2020年までの乳房温存術1,263人中、残した乳房内の再発もしくは新たな乳がん発生(多発がん)は46人(3.6%)いました。そのうち10人が亡くなりましたが、乳房内再発が進行して死に至った人は2人だけです。乳房部分切除術後に残った乳房に再発する可能性はありますが、それが原因で生命が脅かされることはまれです。

最近5年間(2019~2023年)の術後の入院日数を示します。一次乳房再建以外は1週間以内の退院が多く、センチネルリンパ節生検だけで済んだ乳房温存術では3日で退院できます。

表 最近5年間(2019~2023年)の術後の入院日数

手術法 腋窩リンパ節 人数 平均 期間
乳房部分切除術 センチネルリンパ節生検 305人 3.0日 1〜5日
リンパ節郭清 45人 6.2日 5〜10日
乳房全切除術 センチネルリンパ節生検 246人 6.2日 4〜14日
リンパ節郭清 110人 8.2日 5〜16日
一次乳房再建手術(自家組織によるもの) 68人 14.3日 9〜19日

早期発見が重要

集団検診や人間ドックで発見される場合には早期がん(0、1期)の比率が高く、早期がんは先に記したように再発率が低く治癒することが期待できます。
2019~2023年の5年間では、検診・ドックで発見された乳がんの71%が早期がんでしたが、しこりなどに気付いて発見された場合には39%でした。

グラフ③ 2019~2023年の5年間で乳がんが発見されたきっかけと発見時のステージ

偽陽性(異常あり精密検査あるいは手術を行い最終診断は良性になった場合)、偽陰性(がんが存在したのに異常として指摘されない場合)、過剰診断(がんではあるものの急いで治療をする必要がない場合、高齢者では治療そのものが不要である場合)など不利益、問題点はありますが、その一方で自覚症状がなく早期で発見されると治る確率が高くなり、また高価な抗がん剤や分子標的剤まで使用せずに済む可能性が高くなることも事実です。

検診を控えないようにしましょう!

新型コロナウィルス感染症の影響で、医療機関への受診控えや検診利用の減少が明らかになりました。

がんにかからないこと、つまり見つからないことこそが最良ですが、検診やドックを利用することでより早期にがんを発見し、治療内容を軽くすると同時に、そして何よりも治癒をめざしましょう。

令和6年3月1日改訂

  • 西村 秀紀 にしむら ひでき

    1985年卒

    役職

    上席副院長
    乳腺外科部長
    外科部長
    心臓血管外科科長
    心臓血管センター科長
    がんセンター長
    がんセンターがんゲノム医療センター科長

    資格

    日本外科学会 指導医・外科専門医
    日本乳癌学会 乳腺指導医・乳腺専門医
    日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
    日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医 B判定
    乳房超音波検診講習会試験 A判定
    医学博士
    信州大学医学部 臨床教授

    専門分野

    乳腺

  • 中島 弘樹 なかじま ひろき

    1997年卒

    役職

    乳腺外科副部長

    資格

    日本外科学会 外科専門医
    日本乳癌学会 乳腺指導医
    日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医 AS判定

    専門分野

    乳腺

2024/04/01 更新 

- 西村 秀紀
☆中島 弘樹
○中島 弘樹 ○西村 秀紀
中島 弘樹
◇西村 秀紀
○◇中島 弘樹

記号の説明

○:初診担当 / ◎:完全予約制 / ◆:紹介のみ / ▲:紹介、救急のみ / ▼11時診療開始
☆:午後のみ / ★第3週のみ / △:第2木曜日休診 / ◇:午前のみ

キーワード

  • 乳がん
  • 乳房同時再建術
  • 日本乳癌学会 認定医・専門医制度認定施設

特徴・特色

  • 乳がんを主体とする乳腺疾患の治療を行い、日本乳癌学会認定施設に認定されています。
  • 乳がん治療は手術前後に、サブタイプ(エストロゲンレセプターとHER2 の陽、陰性の組み合わせで決定)別に薬物療法(化学、内分泌、分子標的)を選択し、さらに放射線療法が望まれる場合には追加することが基本です。
  • 乳がん手術は乳房切除術と乳房温存術に分けられ、腋窩リンパ節は転移がある場合を除いてセンチネルリンパ節生検を行います。術中迅速診断で転移がない場合や微小転移の場合にはリンパ節郭清を避けます。乳房温存術およびセンチネルリンパ節生検の場合には術後3〜4 日で、乳房切除およびセンチネルリンパ節生検の場合には術後5〜7 日で退院が可能です。腋窩郭清が必要な場合には2日ほど入院期間が長くなります。
  • 乳房切除が避けられない場合には、形成外科の協力で乳房切除と同時に乳房再建術を行うことが可能です。
  • 化学療法や放射線療法は外来治療が基本です。
  • 甲状腺、副甲状腺の手術は、平成29年4月より頭頸部外科が担当しています。

主な対象疾患名

  • 乳がんを中心に乳腺疾患の治療
  • 甲状腺疾患 ほか

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