長野市民病院では、2015年5月に「脳卒中センター」を開設しました。
24時間365日、発症直後(急性期)の脳卒中に対するすべての治療に対応可能であり、脳卒中治療の体制を整えています。
また、多職種によるチーム医療により、さまざまな面から患者さんをケアしていきます。
当院は、2005年秋に脳梗塞発症直後の超急性期治療においてもっとも有効とされる血栓溶解製剤「rt-PA(アルテプラーゼ)」の導入をスタートさせました。
その後も、2011年10月には脳卒中専用の集中治療室「SCU(脳卒中ケアユニット)」を開設するなど、脳卒中治療に積極的に取り組んでまいりました。 そして、この2015年5月からは、これらの集大成として「脳卒中センター」を立ち上げ、さらなる脳卒中治療の質向上を図る目的で組織横断的なチーム医療の体制強化に乗り出しました。
「多職種専門スタッフによる集学的なチーム医療」が長野市民病院脳卒中センターの特徴です。
脳卒中治療は時間との勝負です。
救急搬送されてから診断、治療に至るまでの時間を極力短縮するには、各医療スタッフの専門性に加え、息の合ったチーム医療が不可欠です。 最新の治療法をできるだけ早く開始することが、社会復帰や後遺症軽減への鍵と言えます。
当院では、脳血管内治療による血栓回収療法やコイル塞栓術、神経内視鏡を用いた脳内血腫除去術など、最新の低侵襲治療を導入しています。
さらに、十分なリスク管理のもと、可能な限り早い段階からリハビリを行うことで、患者さんのその後の回復に大きな差が出るとされています。
当院では原則入院当日か翌日の超急性期からリハビリを行っており、高い効果が得られています。
一方、脳卒中治療はスピードが求められるがゆえに、患者さんやご家族にとっては、めまぐるしい変化の中で強いショックやストレスを抱えられることもあるでしょう。
そうしたケアも含めて、私たちにできる最大限のサポートをしていきたいと考えています。
発症4.5時間以内の超急性期脳梗塞に対しては、「rt-PA(アルテプラーゼ)」という薬を点滴で静脈投与して血栓を溶解する治療が第一選択になっています。
少しでも早く投与したほうが回復が早いことが分かっていますので、脳卒中を疑う症状が出たら、一分、一秒でも早く病院に行くことが大切です。
脳血管内治療は、足の付け根部分に局所麻酔をして、カテーテルという細い管を血管内に挿入し、大動脈を経由して頭部内の病変部まで到達させて治療を行う脳卒中治療法です。
負担が少なく治療効果が高いことで知られていますが、全国的に専門医の数が少ないため、実施している医療機関も限られています。
詳しくは、こちらからご覧ください。
大量の出血を伴ったり、脳血管内治療でのコイル塞栓が困難な形の動脈瘤が破裂して起こるくも膜下出血では、開頭手術でのクリッピング術が行われます。 一度クリッピング術を行うと再発の可能性が低く、根治性の高い治療法です。
また、出血量の多い脳出血では、急性期に開頭手術で血腫(出血して凝固した血液)を取り除くことで、リハビリを早く始められるなどの利点があります。 当院では2014年から他施設に先駆けて神経内視鏡を導入し血腫除去を行っています。
これにより小さな傷で治療ができるため、体への負担が少なくて済みます。
2022年9月1日から脳卒中相談窓口を開設しています。
脳卒中療養相談士が脳卒中の治療、後遺症、復職などへの疑問や不安にお答えしますので、お気軽にご利用ください。
なお、入院中の患者さんは、病棟スタッフまでお声掛けください。
脳卒中は日本人の死因第4位ですが、長野県内では第3位です(2012年度)。
さらに、要介護の原因の第1位は脳卒中であり、麻痺などの後遺症が残る可能性が高く、再発しやすい病気であることが大きな特徴です。
脳卒中は、発症からどれだけ速やかに治療を受けられるかによって予後に大きな影響を及ぼします。 その時間は、分単位、秒単位のものです。 ですから、まずは脳卒中の特徴を知ることで、素早く脳卒中に気づくことができるよう、また、迷うことなく一刻も早く救急車要請するようにしていただきたいと思います。
※これらの症状は数分〜数時間で消えることがあります。
これは「一過性脳虚血発作(TIA)」と言って、本格的な脳梗塞の前触れとされていますので、すぐに医療機関を受診してください。
脳卒中治療は1分1秒を争う時間との勝負。
発症から搬送、診断、治療までをいかに素早く、かつ適正に対応できるかにすべてがかかっているといっても過言ではありません。
したがって、最初にどの医療機関に搬送されるかによって、その後の治療に大きな差が出てしまうのです。
最寄りの医療機関を経由し、それから脳卒中センターに転送されたのでは時間のロスが生じてしまい、rt-PA静注療法や脳血管内治療などの時間的制約がある治療が受けられなくなってしまったり、最悪の場合では命にかかわることさえあるのです。
そうしたトラブルを避けるため、脳卒中センターへダイレクトに救急搬送することを「ストロークバイパス」といいます。
救急隊との連携を強化し、地域としてそうした体制を整えることが非常に重要です。
脳神経内科、脳神経外科、脳血管内治療科の3科の医師が脳卒中診療医として24時間体制(交代制)で常駐し、患者さんの状態に合わせた適切な治療を提供できる体制を整えています。
さらに、多職種の医療スタッフが垣根を越え専門性を生かしたチーム医療を実践しています。
SCU(脳卒中ケアユニット)では、脳卒中専門医の資格を持つ脳神経内科や脳神経外科、脳血管内治療科の医師、専従の看護師が24時間体制(交代制)で配置されており、専従のリハビリの療法士も配属されています。
脳卒中をSCUで集中的に治療することで、死亡率の低下や、入院期間の短縮などの効果が得られるというデータが示されています。
人間の体は寝たきりのまま長時間安静状態が続くと、筋萎縮などによって体力の低下が起こるだけでなく、心身にさまざまな不調が生じます。 これを、『廃用症候群(はいようしょうこうぐん)』といいます。
脳卒中リハビリテーションにおいては、廃用症候群を防ぎ、さらには早い段階から患者さんが日常生活へ戻ることを視野に入れたサポートをする目的で、しっかりとしたリスク管理のもと積極的に『早期離床(寝たきり状態を脱すること)・早期リハビリ』を行うことが標準となっています。
当院では入院同日よりリハビリを開始することが多く、中には発症直後の、まだ意識のない状態の患者さんにも、ストレッチなどからリハビリを行うこともあります。
また、患者さんやご家族は、突然の病気に大きなショックを受け、同時に不安でつらい思いをされています。
リハビリを通して心身共に寄り添うことで、患者さんができることを一つでも増やし、これからの生活へ向けて少しでも自信やモチベーションにつなげてもらえることを一番の目的とし、真の意味でのサポートができるよう努めています。
脳卒中患者さんは、意識障害や麻痺などにより口から栄養を摂ることが難しい場合もあります。 そうした場合には、患者さんの状態に合わせて点滴や経管栄養(鼻の管や胃からの栄養投与)などの栄養ルートを選択します。 なお、腸管を通さない点滴投与ばかりが続くと、腸内細菌バランスが崩れ、全身に細菌が広がり合併症を引き起こすこともあるため、感染予防という観点からも栄養管理は非常に重要です。
一方、口から栄養を摂ることが出来ても疾患による影響で、咀嚼して飲み込む機能が低下し、体が必要とする栄養量が確保出来ない場合もあります。 そのような場合には食事形態を工夫し、食べるためのリハビリを行います。
医師、管理栄養士、薬剤師、言語聴覚士が一緒になって回診を行い、それぞれの専門的な立場から意見を出し合うことで適切な栄養管理を実施し、早期回復をめざします。
地域の皆さまへ標準化された質の高い脳卒中医療・介護を提供するためには、地域の医療・介護施設が互いの持つ専門機能(急性期治療、リハビリテーション、維持期医療、介護等)を十分に発揮し連携を取っていかなければなりません。
また、切れ目なく治療やリハビリを継続していくためには、患者さんの必要な情報が連携する施設にスムーズに伝達・共有される仕組みが重要となります。
「地域脳卒中連携パス」とは、救命から日常生活に向かうまでを示す、地域で標準化された診療計画です。パスには、今後の治療の方向性や、連携機関の機能が記載されており、患者さんにわかりやすく提示するとともに、計画に基づき実施した診療内容や患者さんの状態等を記入し連携機関へ情報提供します。
パスを用いることで、治療の場が変わっても患者さんの情報は十分共有され、発症から在宅生活に至るまで的確な治療を継続して受けることができます。
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