不育症とは
不育症について
妊娠はしますが、流産や死産などを繰り返して結果的にお子さんをもてない場合のことをいいます。
流産の頻度
流産は妊娠の10〜20%の頻度で起こるといわれています。また、女性の年齢が上がるに連れて増加し、40歳代の流産は50%という報告もあります。
不育症の主な原因と検査・治療について
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①子宮形態異常
双角子宮、中隔子宮などの子宮の形態異常がある場合には、着床の障害になったり、胎児や胎盤を圧迫して、流早産を繰り返すことがあります。
<検査>子宮卵管造影・経膣超音波検査・MRI
上記検査で異常がみつかった場合は、医師と相談しながら必要に応じて治療を行ったり、程度により経過をみていくこととなります。 -
②内分泌異常
甲状腺機能亢進・低下症、糖尿病などでは流産のリスクが高くなります。甲状腺自己抗体の影響などや、高血糖による胎児染色体異常の増加の関与が指摘されています。妊娠前から良好な状態を維持することが大切です。
<検査>血液検査
上記検査で異常がみつかった場合は、内科医師と相談しながら、服薬や食事療法によりできるだけ良好な状態に戻した上で妊娠する必要があります。 -
③凝固異常
抗リン脂質抗体症候群、プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症、第XⅡ因子欠乏症などの一部では、胎盤の周りに血栓ができやすく、血流が悪くなる血栓症などにより、流産・死産を繰り返すことがあります。
<検査>血液検査
上記検査を行った上で、治療に進む場合は、医師と患者さんと相談の上、治療上のメリット、デメリットを考えた上で、血栓ができにくくするための薬物療法を行います。 -
④ご夫婦の染色体異常
妊娠初期の流産の大部分(約80%)は胎児に偶発的に発生した染色体異常ですが、流産を繰り返す場合は、ご夫婦のどちらかに均衡型転座などの染色体構造異常がある可能性が高くなります。その場合、ご夫婦ともに健康ですが、卵や精子ができる際に染色体に過不足が生じることがあり、流産の原因となります。
<検査>血液検査
染色体検査をお受けになる場合、この検査を受けるメリット、デメリットを十分にご理解された上でお受けになることをお勧めしています。
検査により異常が見つかった場合、染色体異常はもって生まれたものなので治療することはできませんが、染色体異常があっても出産できる可能性はあります。均衡型転座というタイプでは最終的に60〜80%が出産に至ることがわかってきています。
ただし、出産の確率や赤ちゃんへの遺伝については、染色体異常の種類によって異なりますので、医師と相談の上、遺伝カウンセリングを行っている施設にご紹介いたします。 -
⑤不育症リスク因子不明の場合
これらのどこにも異常が見当たらない、リスク因子不明のご夫婦もいらっしゃいます。 これは、偶発的に流産を繰り返している症例が多いことを示しています。リスク因子についての検査結果、特段のリスク因子が無い方は、治療を行わなくても、次回の妊娠が継続される可能性は高いと考えることができます。
よって、しっかりと説明を受け、よくお考えになられた上でどうするか考え決めていかれることが大切です。
また、次回の妊娠への不安をできるだけ取り除くことも大切となります。 -
不育症検査にかかる費用
※費用はこちらをご覧ください。
不育症の方の精神的支援について
流産や死産を繰り返される患者さんの精神的支援を不妊相談にて行っています。
流産を繰り返したり、死産を経験したりした時に、「誰にこのつらさを話せばいいのかわからない」「次の妊娠にも不安があってこのまま妊娠することが怖い」「せっかく不妊治療をして授かったと思ったら流産して天国から一気に地獄へ突き落とされた気分でつらい」「何も手がつかなくて自然に泣いてしまう」ことがあるなど、不安でつらく苦しい胸の内を聞かせていただいています。
なかなか、このような思いを表出できる場所がないと相談を受け、患者さんのお言葉から「思いを表出できる場所の提供を」と思い不妊相談を始めました。
至らないこともあるかと思いますが、少しでも思いを表出していただき、そのお気持ちに寄り添い、少しでも苦しい、つらい、不安なお気持ちが軽減できるように支援できればと思っています。